
01 第2話『隊商』あらすじ
異国からのキャラバン到来で後宮が活気づく中、流行中の香油や茶葉に妊婦へ悪影響を及ぼす成分が含まれていることに猫猫が気づく。玉葉妃の懐妊を守るため奔走するが、香りの流行の裏には不穏な気配が漂い、水晶宮で猫猫が見つけた香りが重要な手がかりに。
やがて一人の妃が急死し、過去の毒殺事件や壬氏暗殺未遂といった未解決の闇が再び動き始める。
毒見役の薬師・猫猫が真相に迫る後宮ミステリー、第2話は伏線と陰謀の始まりを予感させる見逃せない回。
02 ネタバレ
執務室で、壬氏と高順が、今回異国から来るキャラバンについて話をしている。今回は規模が大きく、期間も長いのは、特使を迎える先行隊であるためだ。高順によれば、接待担当の高官は現在、宴席の段取りを準備中とのこと。壬氏は「大事な外交先だから、引き続き準備を進めるように」と指示を出す。
翡翠宮では湿気が多くなってきたため、侍女頭の紅娘の指示で、猫猫たちは玉葉妃の衣替え作業をしている。衣装には流行があり、流行が過ぎると仕立て直して西方にある玉葉妃の実家へ送られるという。そんな話をしていると、愛藍が思い出したように「翡翠宮に新しい侍女が来る」と話し出す。玉葉妃が懐妊中のため人手が足りなくなるのが理由だが、桜花は「それだけじゃない」と憤った様子を見せる。帝の寵妃である玉葉妃の侍女がわずか5人であるのに対し、「50人以上の侍女や下女を引き連れて入内した妃がいるのだから」と。水晶宮の梨花妃でさえ30人ほどなので、桜花が鼻息荒いのも無理はない。衣替えが進む中、猫猫は「こんなに衣装を減らして大丈夫なのか」と心配するが、新しいものをすでに注文しているので問題ないという。そこで桜花が「それに、キャラバンが来るし!」と声を弾ませる。前回キャラバンが後宮へ来たとき、猫猫はちょうど不在だったらしい。桜花はとても楽しみにしているようだ。猫猫にも「時間を取ってあげるから見に行くといい。玉葉様がお小遣いをくれるの!」とテンション高く勧めるが、そのタイミングで紅娘と玉葉妃が現れ、「仕事をしなさい!」と叱られてしまう。
水晶宮では、侍女がお茶を入れている。梨花妃はその横に座り、衣の帯あたりを撫でていた。すると、扉から侍女頭の杏(シン)が入室してくる。「お呼びでしょうか、梨花様」と杏が尋ねると、梨花妃はキャラバンの買い出しリストを手渡す。それを受け取った杏は、「手の空いている者に行かせます」と答えるが、その口元は真一文字に結ばれていた。そのまま退室した杏を、外で待っていた下女が呼び止める。「診療所からの言伝です」と書簡を差し出すと、杏は訝しげにそれを受け取り、目を通した瞬間、不穏な表情を浮かべる。
キャラバンでにぎわう広場を、猫猫と小蘭が遠くから眺めている。しかし猫猫は、キャラバンの賑わいよりも、後宮の特殊な環境について思いを巡らせていた。これだけ多くの人が住んでいるのに、店はなく、まともな医者もいない。それでも衛生管理は行き届いており、汚物は地下水路を通じて堀を経由せずに川へ流されるため、意外にも病気は広がりにくい。これは、やり手の女帝が西方の技術を取り入れて整備させたものらしい。それでも、重病を患った者は実家に帰されるという。キャラバンは5日間開催される予定で、小蘭は猫猫に「最終日に一緒に行かないか」と声をかける。猫猫はその誘いをうれしく思い、ふたりで行くことに決めた。
キャラバンの初日が終わり、翡翠宮では購入した品々を前に、玉葉妃が「買いすぎたかしら」とつぶやく。それに対し、紅娘は「そんなことありません。他の妃はもっと買っていますから、むしろ少ないくらいです」と返す。明日も商人が来る予定のため、今日の購入品を片付けていたところ、猫猫はあることに気づく。買った着物は、どれも長袖で胸の下で帯を締めるタイプばかりだった。商人が「今、流行っている」と言って、このタイプだけを持ってきたらしい。猫猫は「玉葉妃の懐妊が外部に漏れているのではないか」と推測する。そして玉葉妃に、「帯を腰でしっかり締めるデザインのものがあるか、確認した方がよい」と助言する。紅娘は、猫猫の言葉の意図をすぐに汲み取った。
キャラバン最終日。猫猫は、品物の数はだいぶ少なくなっていたが、はしゃぐ小蘭とその雰囲気を楽しんでいた。店先に並ぶ品々を、キラキラとした目で眺める小蘭に、猫猫は玉葉妃からもらったお小遣いで髪紐を買ってやり、髪を結んであげる。「ありがとーーー!」と喜ぶ小蘭の姿を見て、猫猫は「妹がいたら、こんな感じなのかな」と目を細めた。次は猫猫の買い物だ。薬は売っていないため、茶葉や香辛料が目当てである。最終日ということもあり、猫猫は値切り交渉に意欲を燃やしていた。
ある店先で、ジャスミン茶を見つける。「これください!」と声をかけたその瞬間、同じセリフが重なった。隣を見ると、見覚えのある顔があった。
――先日、子猫の毛毛を捕まえてくれた女官だった。
「猫ちゃん元気?」
「元気だよ。医局にいるよ」
そんな会話をしているところへ小蘭が現れ、「あれ? 子翠(シスイ)も休みもらえたの?」と話しかける。どうやら、小蘭と子翠は知り合いらしい。猫猫は、子翠が小蘭と同じ尚服を着ていることから、洗濯場を使う女官なのだろうと推測する。ジャスミン茶を買い終え、「邪魔になるから場所を変えよう」と言って、猫猫は二人を医局へ連れていく。
医局では、やぶ医者が毛毛を抱いて出迎えてくれた上、三人に月餅を振る舞ってくれた。買ったばかりのジャスミン茶を淹れ、月餅を頬張りながらキャラバンの話をしていると、口の軽いやぶ医者が「近いうちに特使が来るから、今回は大規模なんだ」と教えてくれた。
すると子翠が、「そういえば、後宮の北側で変なにおいがする」と話し始める。汚物で地下水路が詰まれば、地上ににおいが漏れるかもしれない。子翠は、「北側は草むらが多いから、虫取りによく行く」と言い、虫の絵を描いた紙を猫猫に見せてくれた。
その絵のうまさに、猫猫は思わず感心する。さらに、「北側には大きなクモもいる」と聞いて、猫猫はときめく。クモの糸には止血効果があるらしい。子翠と猫猫はクモの話で盛り上がり、小蘭とやぶ医者は完全に置いてきぼりになっていた。
どこかの蔵だろうか。暗闇の中で、女性の咳き込む音が聞こえる。そこへ、灯りを手にしたもう一人の女性が入ってきて、静かに籠を開ける。中には、模様の入ったきらびやかな瓶がいくつも並んでいた。
洗濯場では、小蘭が「く、臭い」と息を止めながら洗い物をしていた。
キャラバンから数日が経ったこの日、後宮では香油が大流行しており、特に西方の香油は匂いが強い。すると、同じ洗濯場を使っていた下女が手を滑らせ、洗濯物を盛大に猫猫の頭上へぶちまけてしまった。
猫猫はそれをかぶりながらも、薔薇(そうび)の香りがすることに気づく。以前、壬氏の依頼で青い薔薇を作ったことを思い出す。もしあの薔薇で香油を作ったら、きっと売れるだろう……などと考えていた猫猫だったが、ふと、ある疑念が頭をよぎる。思いつくまま、周囲の目も気にせず、洗濯場の洗濯物を端から端まで手に取り、クンクンと匂いを嗅いで回る猫猫。そして、ある確信を得た瞬間、彼女は一目散に水晶宮へと駆け出した。
水晶宮に到着するや否や、先ほどと同じように、侍女たちの着物の匂いを説明もなく嗅ぎまくる猫猫。次の侍女の着物の裾をつかみ、顔を近づけたその時——「あなた、何のつもり?」鋭い声でたしなめられてしまうのだった。
猫猫は翡翠宮で、壬氏に問い詰められていた。水晶宮で猫猫の粗相をたしなめたのは、侍女頭の杏だった。その杏から、壬氏に苦情が入ったのだ。翡翠宮の面々は、壬氏と猫猫のやり取りを見守っている。
猫猫は壬氏に(形式上)謝罪し、奇行と思われた行動には理由があるのだと語り始める。まず壬氏に一枚の紙を渡し、読み上げてもらう。そこには数種類の香の名前が記されていた。そして、それらに含まれる香の中には、妊婦に害を及ぼす副作用があることを猫猫は説明する。まだ公にはされていないが、玉葉妃は懐妊している。一同が息を飲む中、玉葉妃に促されて猫猫はさらに話を続けた。キャラバンでは、香油のほかに香辛料や茶葉なども売られていた。猫猫自身もジャスミン茶を購入している。しかし、ジャスミンには子宮を収縮させる作用があり、辛子には堕胎作用がある。もちろん、少量であれば問題はないが、誤った使い方をすれば危険なものだ。猫猫は説明しながら、自分が祭りのような雰囲気に流され、うっかりしていたことを悔やんでいた。壬氏は「業者の出入りは調べればわかるが、すべて検品していたとしても、品ごとの詳細な記録までは残っていないはずだ」と指摘する。ここで猫猫は、核心に触れる話を口にする。
「これって、あれに似ていませんか?」
——副作用が広く知られておらず、後宮にあっても不自然に思われないもの。
玉葉妃の第一子である鈴麗が産まれた直後に体調を崩し、同じ時期に生まれた梨花妃の子が死んだ原因。
それは、鉛入りのおしろいだった。
壬氏は「後宮内に毒を持ち込んだ者がいるというのか」と問うが、猫猫は「まだ断定はできない」と返す。ただ、キャラバンを通じて持ち込まれた物の中に、毒になりうるものが多いと感じた、とだけ言った。とはいえ、他の妃にも注意を促すべきだと助言する猫猫。壬氏は高順に調査を命じ、玉葉妃も侍女たちに翡翠宮の香油・香辛料・茶葉を確認させるよう指示する。
その時、猫猫は考えていた。——偶然が重なって起きた、あの事件。一度は死に、後に蘇り、その後行方がわからなくなった翆苓(スイレイ)。そして、中祀で壬氏が暗殺されかけた事件。あれもまた、多くの人間が関与していたに違いない——。
翡翠宮を出た猫猫は、厨房で再び思案していた。憶測と確信、偶然と必然——考えを巡らせても答えは出ない。
養父がよく言っていた「憶測でものを言ってはいけないよ」という言葉を思い出しながら、キャラバンで買ったジャスミン茶を淹れ、頭を抱えていた。
そこへ、壬氏が現れる。高順は伝令に出ているという。猫猫がお茶を出そうとすると、壬氏は「ジャスミン茶が飲みたい」と言う。だが、残っていたのは最後の一煎で、すでに出がらしになっていた。猫猫が「出がらしになりますよ」と言うと、壬氏は「それでいい」と返す。さすがに出がらしを出すわけにもいかず、猫猫は別の茶を用意しながら、二人でジャスミン茶の効能について話し始めた。
ジャスミンにはリラックス効果、不眠の改善、目覚めの促進など、良い作用の方が多い。だからこそ、猫猫は「副作用についてはあまり知られていないのだ」と話す。
そうして白茶を淹れて壬氏の前に出すと、「出がらしでいいと言ったのに」と壬氏は拗ねてしまう。その様子に猫猫は少しうんざりし、「ジャスミンには主に男性の不妊改善の効用がありますよ」と皮肉を込めて言ってしまう。さらに拗ねた壬氏は、そのまま帰ってしまった。
厨房を出た壬氏は、伝令から戻った高順と合流する。その場で、高順から「中級妃・静妃(ジンヒ)が亡くなった」との報告を受ける。続けて、高順がそっと耳打ちすると、壬氏は驚いたように目を細め、「毒……? まさか……」とつぶやいた。
翡翠宮では、紅娘が玉葉妃にお茶を淹れている。
ふと顔を上げた紅娘の表情には、どこか疲れの色がにじんでいた──。
03 伏線と考察
第2話にして、不穏な気配がじわじわと漂い始めました。1期のストーリーとリンクしている展開は、さすがの構成力です。
伏線と思われる、気になるシーンもいくつか散りばめられていました。
まず、懐妊中の玉葉妃に害を及ぼそうとする人物の存在が示唆され、商品に紛れて毒を持ち込む手口は過去の事件と重なる部分があります。
また、子翠が「後宮の北側の草むらで異臭がする」と話していたのも気になるポイントです。
明らかに怪しいのは、水晶宮の侍女頭・杏の反応。主である梨花妃への忠誠心があまり感じられず、不穏な空気を漂わせています。また、その梨花妃が帯(腹部)のあたりを撫でていたのは「もしかして?」と思わざるを得ないシーンでした。
そして、終盤に突然報じられた中級妃・静妃の死。これがキャラバンと関係しているのかどうかも気になるところです。
最後のシーンで見せた、翡翠宮の侍女頭・紅娘のやつれた表情も見逃せません。
キャラバンを利用して毒物の流通が行われているのでしょうか。
北側の異臭は、他の伏線とつながるのでしょうか。(絶対つながるでしょ)
猫猫は翆苓の事件や壬氏暗殺未遂事件との関連を疑っているようですが、そうであれば壮大な陰謀の存在があるのかもしれません。
一話たりとも油断できない、伏線まみれのアニメ。見逃せない展開が続きます。